あれから

作:小俣雅史

 

第二話

 

 オレが家を飛び出し野外特設会場へと駆けつけると、既に試合は始まってるようであちこちに点々とするギャラリーや真央や初音さんの学校の生徒、相手校の生徒からの歓声があがっていた。その殆どが女子だというのには少し抵抗があったが、変な目的の男達がいないのでオレもその一人に見られないで済みそうだ。

会場は聖沙へ行く途中の道の傍に流れる一級河川の土手との間にある河川敷にラインが引かれ、そこで試合は行われていた。

 オレは乱れている呼吸を整えながら十分試合の様子が確認できる土手へと腰を下ろすと、まず真央の姿を探した。

「……あ、初音さん」

 しかしそれよりも先に初音さんを見つけた。

 

 仲間からのパスを受け取ると、疾風のようなスピードで敵ゴールまで走り、ゴーリーに正面からボールをぶつけ弾かれたかと思いきや跳ね返ったボールをもう一度踏み込みクロスで打ち返しゴールに叩きこむという離れ業をやっていた。そして大きな歓声。流石にそのプレーは一時的に愛する彼女より目を惹くものがあって、オレはゴールを決めた本人の初音さんの姿をそれからもしばらく追っていた。

 再び攻めに入った聖沙の女の子が、キープしていたボールが相手チームに叩き落された。すると相手も中々やるようで、こぼれた球をすぐに拾うとゴール目掛けて全体でコートを攻めあがり始める。そして本当に見えないくらいに早いパスでゴールまでにじり寄り、ふとゴーリーに視線を移すと真央が真剣な表情で待ち構えていた。やはり真央はちゃんと間に合って守らせてもらいっているようだ。

「真央! 止めて!」

「はいっ!!」

 遠くにいながらも初音さんと真央のやりとりがオレの耳に届く。お互い割と通る声をしているせいもあるだろうが、その声には熱いスポーツ魂というか迫力がこもっていた為に聞こえてきたのだろう。

 そしてゴールから2.6メートル、確かゴールクリースだとか言ったサークルの中にボールを持った敵が攻め込み、そしてシュート!

「あぶないっ!」

 オレもいつのまにかその熱い会場のムードに溶け込み、つい声を出していた。

 真央が予測して守りに動いた方向とは逆を突かれ、フリーのスペースへとボールが叩きこまれる……が、真央が咄嗟に片手で突き出したクロスでそれを受け止めた。

「うまいっ!」

 真央にはこれがある。

 

『真央は頭を鍛えた方がいいわね』

『なっ、初音先輩。それ、私を物凄くバカにしてませんか?』

『そういう意味で言ったんじゃないの。頭っていうのは、相手の動きとか、シュートのポイントだとかを瞬時に予測して判断して動く為のものよ』

『あ、そうですか、あはは……』

『あははじゃないわよ、まったく。真央は、良い反射神経持ってるんだから、あとはそういうところを鍛えれば凄い選手になるわよ』

『そ、そうですかあ? えへへ』

『まあそういう選手になる為にはしっかり練習しないとな、真央』

『う……』

『ふふ、それじゃあ真央。椎名さんも見てくれていることだし、これから100球、受けてもらうわよ?』

『うえー!!』

 どうやら未だおつむの方は今一つらしいが、その反射神経は間違いなく真央の武器だ。その証明とも言える今のセーブには、流石としかいいようがない。

「真央、早くっ!」

「てえいっ!」

 そしてそのセーブに己で感心することもなく、即座に敵陣目掛けて走り始めた初音さんへと強烈なパスを送り出す。それを受け取った初音さんも約90メートルを一気に突っ切り、手薄になった防御をラグビーさながらのステップでかわし、再びゴールを……決める。

 その瞬間、またひときわ大きな歓声があがった。

 

あれから 第三話へ続く




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