暑いッスね、師匠
作:小俣雅史
第四話
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と、言うわけで、オレ達は二人の絵のモデルになっている。
ていうか、気がついたらモデルにされていた。
どうも寝てる間に、どっちの寝顔が可愛いかとかいうわけのわからん論争になったらしい。
寝顔というよりたぶん死に顔だったと思うが、まぁ今となっては過去の話だ。
それで、どっちが可愛い、というよりは健とオレ、どっちが格好いいか、絵にして比べるらしい。
当然みなもはオレ、相摩さんは健を描いている。
そしてオレ達は一時間半程、ずっと二人の望むポーズを取らされている。
オレは自由の女神と同じポーズを取らされ、健は考える人のポーズと取らされてる。
動かないだけでもしんどいというのに、周りから変な目で見られて相当キツイ。
駅前を行き交う人々がいちいちこちらの方を向いて雑踏に消えてゆく。
訝しげな視線ならまだ許容範囲なのだが、笑われたりした日には消えたいくらいだ。
オレ達を見下ろしている澄空の木が時々風に揺れる。
その葉擦れの音さえも、オレ達を笑っているかのようで辛かった。
「みなも、まだ?」
「あとちょっとです」
オレはとうとう限界が近づいてきて、みなもに残りはどのくらいか尋ねる。
だが返ってきたのは、あとちょっとという言葉だった。
普通の人はそれならいいじゃんと思うかもしれないが、みなものあとちょっとは意外と時間がかかる。
遅筆という訳ではないのだろうが、丹念に描こうとするみなもの気持ちがそうさせるのだろう。
モデルに取ってはありがたいんだか辛いんだかわからない話だ。
健も同様のことを相摩さんに尋ねていたようだが、やはり返ってきた言葉は同じらしい。
オレと似たような表情で考える人になっていた。
第五話へ続く
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