暑いッスね、師匠

作:小俣雅史

 

第五話

 

 ……一時間後……


「できたぁっ!」

「できましたぁ!」

 みなもと相摩さん、同時に完成したとの声があがった。

 その瞬間、オレと健は姿勢を崩してコンクリートの地面と懐かしの抱擁を交わした。

 固まった体をほぐすため、オレは寝たまま伸びをした。

 それを終えると、うつ伏せになった状態からオレは体を回転させてあお向けになり、生い茂る青い葉を眺めた。


「平和だ……」

 オレは柄にもなく不思議な感慨にとらわれて、ついそんなことを呟いた。

 だが、それは間違いのようだった。

「ほら、やっぱり智也さんの方が格好いいでしょ!?」

「違うよ、健さんの方が全然格好いい!!」

 戦争は続いている。

 この争いがいかに不毛であるか、オレと健は重々承知しているのだが、彼女達は止まらない。

 自分の描いた絵に映っているオレ、そして健を指差しながら吼えあう。

 どちらも良くかけていて、凄いと思うが、あまり本人達にとって出来は関係ないようだ。


 二人の熱いバトルは続く。

 何故そんな見栄というか自慢というかをしなければいけないのか、オレには理解できない。

 自分が一番好きならそれが一番に見えるのはわからんでもないが、それを他人に押し付けるのもどうかと思う。

 だから、オレと健は仕方なく立ち上がった。


「ほらみなも、落ち着け」

「希望ちゃんも落ち着いて」

 オレと健は今にも取っ組み合いになりそうな二人を引き剥がす。

 そのまま引っ張っていき、ある程度離すとオレはみなもの体を自分の方に向けさせて目を見た。

「いいか、みなも。確かにオレはこの上無い程の美少年だが、相摩さんには健が一番に見えるんだ。わかるか?」

「…………」

 オレは聞き分けのない子供を諭すように言った。

「オレはみなもの在原業平になれればいいと思う。まぁ、実際なれてるかどうかはわからないけどな」

 その言葉に、みなもは驚いたような困ったような顔をする。

「そんなことないですよ。それに、私は智也さんは智也さんでいいです」

「そっか……ま、健は相摩さんの在原業平って訳だし、伊波健というこの世で一番格好いい人なんだ」 

 オレがそう言うと、しばらく何か考え込むような仕草を見せた。

 自分の中で割り切っているのだろう。

 オレはみなもの次の言葉を黙って待った。

「……そう……そうですよね。私、少し変な意地張ってました。希望ちゃんに謝らなくちゃ」 

 みなもは納得したように頷くと、相摩さんの方に駆け寄っていった。

 相摩さんの方も健に諭されたようで、みなもへと駆け寄る。

 遠目に見て何やら決まり悪げな表情で会話をしている。

 恐らく……仲直りというこの上なく素晴らしい儀式を執り行っているのだろう。

 それにしても、変な意地……か。

 それは彼氏としてありがたいぞ、みなも。


 しばらしくてみなもはオレの方に歩み寄り、仲直りしたとの旨を伝えた。

 オレは満足して頷くと、何気なくみなもを抱き寄せた。

「ひゃっ!?」

 しかしこの行動にみなもは驚いたようで、小さな悲鳴のような声をあげる。

 まぁ、確かにこんな人通りの多い中で抱き合ってたら恥ずかしさもあるだろう。

 オレも恥ずかしい。

 だが、先ほどのモデルの時の恥ずかしさをみなもにも味わってもらおう。

 ……と、いうのは建前で、本当は衝動ってやつだな。

「みなもは可愛いなぁ」

「な、何言ってるんですか智也さん」

 みなもは顔を真っ赤にしながら困惑したような表情を浮かべてオレの顔を見上げる。

 オレはそのみなもの唇を唇で塞いだ。

 最初は困ったように手を浮かせていたみなもだがが、オレが抱きしめる力を強めると、みなももオレの背中に手を回した。



 …………こういうの、世間ではバカップルとか言うんだろうな。

 いや、それでも死語か?



 でも…………ま、いいか。

 

−END−

 

 

−執筆者あとがき−

 

やはりKID用に投稿したSS。

まぁこれで載ったら凄いかもってとこは今だとあるかなぁ……。


それにしても、折角十っちゃんにネタ提供してもらったのに。
悪いッス……。


私の技量が至らんからこういうことになったんだろう。


これからも精進すっぺ。


であであ

(2001年12月21日)





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