相摩希望

作:小俣雅史

 

第六話

 

??「……ゃん……よ……」

??「……ン……か……」

(…………)

??「……はや……いかな」

??「……だから……だろ」

(…………!)

ぼくは聞き覚えのある声に意識を段々と覚醒させる。

ゆっくりと目を開けると、見慣れない天井がそこにあった。

健「あ……」

なにかを言おうとして、口をあけたけど、言葉にならなかった。

喉が変な感じだ。

ほたる「健ちゃん!?」

信「イナケン!? 目ぇ覚ましたのか!?」

その声に、ぼくの意識は完全に覚醒した。

不思議に動きづらい自分の頭を横に倒して、二人の方を見る。

健「ほたる……信くん……」

今度は言葉にできた。

ほたる「…………健ちゃぁぁぁぁん!!!!」

ほたるは目に涙を溢れさせたかと思うと、嬉しそうな笑顔でぼくの体にのしかかった。

信「心配させやがって……この……」

信くんも、うっすらと涙を浮かべながら、こちらを見ている。

ああ……ぼくは……。

でも、とりあえず……。

健「ほたる、重い」

一言告げた。

予想していたことだけど、ほたるは顔を真っ赤にしながらぼくに猛抗議を始めた。

当事者だけど、この光景をどこからか客観的に見ているぼくがいて、少し不思議な気分だ。

健「……あれ? ほたる?」

ふと、違和感を感じた。

ぼくは特に思考せずに、その違和感の正体に気がつく。

健「なんでここにいるの? 留学してたんじゃ?」

そう、ぼくの記憶が確かなら……確かなら……?

あれ……?

ほたる「何言ってるの健ちゃん? ほたるはぁ、健ちゃんがいるから、行かなかったんだよ?」

健「え……?」

ほたる「……健ちゃん?」

ほたるは留学……しなかった……?

――とその時、不意に頭の中が掻き回されるような感覚を覚えた。

無理矢理頭の中に手を突っ込まれて、ぐちゃぐちゃと脳を弄られてる気分だ……。

一掻きされる度に、誰かの顔が点滅する。

見たことがあるようで、懐かしい……。

だけど、それがぼくは不快でたまらなかった。

ほたる「健ちゃん? どうしたの!?」

ほたるが心配そうに、ぼくの肩を掴んで揺する。

信「イナケン!? 先生呼ぶか!?」

信くんもベッドの頭の方にあるナースコールのボタンを押そうとしながら言う。

ぼくは、頭を抱えながら吐き気と戦っている。

全身からは脂汗が流れ出し、それが不快さを助長していた。

健「う……ぐ……」

そして、ぼくの意識は光の無い世界へと引きずり込まれていく。

最後の瞬間、ぼくの頭の中で一人の少女が微笑んでいた。

……一人の……少女が……。

――意識は途絶えた。



第七話へ続く




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