Memories Off 〜宇宙を翔ける想い〜

作:小俣雅史

 

第六話

 

 とても静かだった。

 外界の音全てがシャットアウトされてるようで、何も聞こえない。

 そしてとても温かかった。

 真っ白な光に包まれたような世界で、それがオレにやすらぎを与える。

(……や……もや……)

 ふと、何も聞こえなかったこの場所に、音が混じる。

(……ともや……智也)

 よく聞くと、その音は声。

 しかもオレの名を呼んでいた。

 誰だ? オレの名を呼ぶのは?

(私だよ、智也)

 次には、その声は明確に言葉を発していた。

 そしてその声は、確実にオレの知っている声。

 …………彩花か!?

(うん)

 声の主がそう言うと、真っ白だった世界は変化を見せる。

 光の一片が切り取られたようにこの世界で姿を強調していく。

 やがてその光は人の形を取り始め、気がつけば昔見た光景が目の前にあった。

「彩花!!」 

 オレはその少女の名を叫んだ。

 理由もなく、ただ心から出た叫びだった。

「どうしたの智也。そんな熊でも見たような顔して」

 茫然と立ち尽くすオレをよそに、彩花は微笑みながら、何気なくそう言った。

 オレは彩花の一挙手一投足を食い入るように見つめる。

 それは紛れもない彼女で、オレの大切な人の一人だった。

「なんでお前……あ」

 オレは自分で呟いてから先程のことが思い起こされる。

「オレは……死んだのか?」

 先程覚悟した事実をオレは彩花に問う。

 バカみたいな話ではあるが、それならば彩花が目の前にいる理由に説明がつく。

 彩花はその問いに対し、躊躇もなく答えた。

「智也はまだ死んでないよ」

 オレはまだ死んでいない。

 ……ならば、なぜ?

「智也はまだ死んでない。まだ、死んじゃいけないんだよ」

 彩花は言う。

 だがオレはその言葉の意味をわかりかねた。

「死んじゃいけないって……どういうことだ?」

「はぁ……相変わらずバカだね智也」

 オレがそう言うと、彩花は呆れたようにためいきをついた。

 なんだか今ので先程までの雰囲気がブチ壊しにされた気がするが……まぁそれでもいいか。

「バカとはなんだバカとは。こんな品行方正な美少年をつかまえておいて」

「そういうとこがバカって言うんだよ。ほら、唯笑ちゃんが待ってるから、早く行ってあげなよ」

「お前に言われなくともわかってる」

「やれやれ……智也はきっと死んでも可愛くならないね」

「…………ありがとな」

「どうしたの? 急に改まって?」

「ん……なんでもないぞ。んじゃな」

「ばいばい」

 彩花は光の中でオレに手を振った。

 そしてオレも軽く片手をあげて振り返す。

 なんだかそれは無性に懐かしくて、昔どおりを振舞ったつもりなのに……。

 涙が溢れてきた。

 オレはその様子を悟られまいと背中を向けると、意識を覚醒させようと目を閉じた。

 意識を覚醒させるのに目を閉じるというのも変な話だがな……。



第七話・八話へ続く




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