Memories Off 〜宇宙を翔ける想い〜
作:小俣雅史
第五話
「っ!」
「ん? どうかしたか、イナケン!?」
信くんはぼくの表情の変化に気づき、叫びながら尋ねた。
「あ、いや、なんでもないよ」
ぼくはそのことを慌てて誤魔化した。
かなり表情は引きつっていただろうが、今の信くんにそんなことを追及する余裕は無いのだろう。
それ以上信くんは何も言わなかった。
(ユウナギの反応が……消えた……)
ぼくにはそのことを信くんに伝えることはできなかった。
翔太の方はぼくの表情から察したのか、決まりが悪そうな顔をしている。
この鬱な気分を振り払おうとぼくは一発頬を叩き、自分を奮い立たせてモニターに喰らいついた。
「敵戦闘機13機接近! エネルギーも危ないから、無視して突入した方がいいよっ!!」
「わかった!」
ぼくは本来翔太の仕事である状況判断と指示をした。
だがこれはもはやそんな役割がどうのこうの言っていられる状況ではない。
さらわれた南先生や、唯笑とかいう人を助けるために、できることはしなければならない。
そしてアサナギは敵の戦闘機の攻撃を最小限の動きで回避しながら母星めがけて突っ込んでいく。
こうして改めて考えると、信くんの操縦技術も大したものだ。
『俺は宇宙世紀の人より凄いぞ』
と訳のわからない事を言っていたが、凄いことは事実だ。
それからアサナギは母星へと到達し、適当なドックの入り口のシャッターを破壊して内部へと突入する。
「よし……今から二人の居場所を捜してみる!」
「頼んだぞ、健」
「イナケン、なるべく早くしてくれよ!」
ぼくは捕まっている二人の居場所を捜しはじめた。
元々発信機などがついていた訳でもない二人なので、結構な重労働だ。
ぼくはコンピュータを指が壊れるんじゃないかという速度で操作する。
特定の脳波を検索し、それを見つける。
かなり辛い……。
信くんがアサナギで護衛機を破壊する振動にふんばりながら、ぼくは捜し続けた。
爆音の中でキーボードを操作する音だけがぼくの頭の中には吸収されている。
(…………ん? いた!!)
ぼくはモニターに一箇所だけ点滅している箇所を発見した。
「いたよ信くん! 場所は……そっちに送信する!!」
口頭で説明するよりそっちの方が手っ取り早いしわかりやすい。
モニターみながらの戦闘は少しキツイが、そこは我慢してもらおう。
二人の反応は弾薬等の保管施設のすぐ近くのやや広い場所で見つけた。
もしかしたら、そこにも敵の機体がいるかもしれない。
ぼくは少しそのことを注意したが、信くんは聞いていないようだった。
「いちいち面倒だなコイツら!!」
目の前に倒しても倒しても現れる護衛機。
倒すのも面倒になった信くんは、壁を破壊しはじめた。
そのままその場所へと向かう気なのだろう。
そして幾度も幾度も分厚い壁を粉砕し、二人の姿を求めて駆け抜けるアサナギは、とうとう最後の壁を貫いた。
「ここかっ!!」
信くんは躊躇なくその中へと入った。
そしてすぐに酸素があることを確認すると、合体を解いて戦闘機形態になり、即座に降りて二人の姿を探す。
ぼく達も続くように降りて、周囲を見渡した。
「くっ……中森、イナケン、広すぎるから分かれて探すぞ!」
「わかった。じゃあ俺はこっちを探す」
「じゃあぼくはこっち」
この空間はあまりにも広すぎたので、固まって探すのは効率が悪い。
モニターに映っていたのとは随分サイズが違うな……。
とにかく翔太はすぐに駆け出して視界から消えていった。
電灯がろくについていないので随分暗い。
「イナケン、見つけたらすぐに知らせろよ」
「うん!」
ぼくはそう言うと、信くんと別れようとした。
だが
ドォォォォォォンッ!!
突然、ぼく達の背後から爆音が聞こえた。
ぼく達は驚いて後ろを振り向く。
そこには……見たことの無い機体が空中に浮かびながら、不気味な威圧感を放っていた。
「地球人よ。我の名は星皇クィックィ……」
いきなりその機体から声が聞こえた。
しかもそれは己の名を名乗った。
星皇……ということはクィクィ星人の親玉が直々に現れたってこと……。
「信くん」
「わかってる……乗り込むぞ!」
急いでぼく達はアサナギに乗り込み、臨戦体制をとった。
だがしかし、翔太がいないため合体ができない。
かなりの戦力不足を強いられている。
「信くん、翔太を呼び戻す?」
「いや、あいつには二人を捜してもらおう。こんなヤツ、俺達で十分だろ?」
「うーん……」
「なんでお前はそういつも優柔不断なんだ。行くぞ!」
信くんは一言ぼくに言うと、先にクィックィへと向かっていった。
ぼくも一応飛び立って間合いを取った。
そして敵の機体を分析する。
敵の機体は各部が様々な形に突起しており、外見上殆どビーム兵器の塊である。
しかも信くんが攻撃を仕掛けると、その体格の割に俊敏な動きでそれを避ける。
強いな……。
「ハエは……落とさねばな」
刹那、複数の光の筋が信くんを襲った。
「うあああ!!」
通信を通して信くんの絶叫が聞こえた。「信くん!?」
ぼくの視界からは信くんの機体の姿が完全に消えた。
そしてぼくの方にもビームが飛び始め、信くんのことを気にかけながらも回避運動をする。
戦闘機形態の速力は中々のものだが、それでもギリギリ避けられる程度だ。
機体のコンピューターが良いのか、クィックィの腕がいいのか、物凄い命中精度である。
「まずいよ……これは……」
ぼくはつい絶望的な言葉を呟いていた。
第六話へ続く
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