……30分後
「おにいたま…すっごかった〜〜! 最初の一発でピチュゲットして、それから立
て続けに全部ゲットしたんだもん!!」
「そーだろそーだろぉ!」
射的でゲットした数々の景品を背中のスポーツバッグ――実はこれも射的でゲット
したやつだ――に入れ、オレは自慢げに胸を張った。勿論、ヒナが欲しがっていた
『おっきなピチュ』は最初の一発でゲットして、今はヒナの腕の中で大人しくしている……。
それにしても、これがライフル銃だったら当たらない所の騒ぎじゃないな……とここでオレは神様に感謝するのだった。
「そーいやぁヒナ……腹、減ってないか?」
オレの一言に応じるように、ヒナとオレの腹の音が同時に鳴るのが聞こえた。
その音でどちらからともなく、
「「くははっ……(くしししし…)」」
……と、お互いに笑みをこぼすのだった。
そーやって笑みをこぼしながらも、オレは夜店でやきそばやらたこ焼きやらお好み焼きやら買ってきて、
ヒナと一緒にどこか落ち着いて食べられる場所に移動した。
「ここでなら大丈夫だな…ヒナ、ここに座って」
オレはベンチにバンダナを敷き、そこをヒナの為の特等席にした。だが……
「……おにいたま、ヒナ…おにいたまのひざの上がいいな…だめ?」
そう言いながらオレの方に近づく。少し考えた後…
「『何でも言うこと聞く』ていったしな……その代わり、食い物浴衣にこぼすなよ」
「うん!!」
返事するが早いか、ヒナはオレの膝の上にまたがって抱っこ状態で座った。オレは内心……
(これを咲耶が見た日には……地獄見るのは火を見るより明らかだな……)
……そう思いながら苦笑いしてしまうのだった。そんな事を思っていると膝の上からヒナが……
「おにいたま、はい……あ〜〜ん」
……と、バカップルのお約束を殆ど人気のないここでやるのだった。オレは少しばかし躊躇ったが……ハラ
を括って目を閉じて口をあけ、ヒナが食い物をオレの口に持ってくるのを待つ。
…だが、何時までたっても一向にその気配はない……そこで目をあけると…。
「まぐまぐ…もぐもぐ……」
見事にフェイントを突かれたよーだ(しくしくしく……)。
そこで今度はオレが、口の中の物を飲み込んだヒナに……
「ヒナ…今度はそっちの番だぞ。お口あけて…」
そう言ってヒナにお好み焼きの一片を口に持っていこうと思わせて……やろうとしたら……
――まぐん!――
……お好み焼きを食い付かれた……。食い付いたものが口の中にあるにも関わらず、ヒナは…
「おにいたま……まだまだダネ…くしししし……」
…どっかで聞いたようなセリフを口を手で押さえながら言うのだった。
買ってきたものを全て胃に収めてすっかり夜も更け……そろそろ家に帰る時間になろうとしているとき、ヒナが、
「おにいたま…最後に『チョコバナナ』食べたいの…」
オレは腕時計を見て、まだ夜店がしまる時間でない事を確認すると、二人でチョコバナナを売っている夜店に行った。
第三話へ続く