――翌朝――
アルベルト「こりゃあひでぇや……」
怒りあらわの表情をしたアルベルトの視線の先には惨殺死体となった男が横たわっている。
そしてその周りを大勢の野次馬が取り囲んでおり、それによる混乱を防ごうと自警団員たちが必死に野次馬連中に注意している。
そんな中、その群れを押し分けてアルベルトの元に、白衣をまとった男が駆け寄ってきた。エンフィールドの名医トーヤ・クラウドである。
トーヤ「アルベルト、例の惨殺死体と言うのはこれだな」
アルベルト「あぁ、素人目に見ても絶対にありえねぇ殺され方をされてる。それで、ドクターなら分かると思って……」
トーヤは死体を見るなり、すぐにその状態がおかしいことに気が付いた。その死体は四肢と胴体、腰が全て服の上から綺麗に切断されていたのだが、
そういった派手な斬られ方にもかかわらず、死体の周りはおろか死体自体にも血痕がなかったのだ。そしてさらに……、
トーヤ「アルベルト、死体の頭はどこにあるんだ?」
アルベルト「第一発見者が死体を見かけた段階で既になかったと……」
そう話しているところに、更に一人の偉丈夫・自警団第一部隊隊長リカルド・フォスターが駆けつけてきた。
リカルド「アル!現場の様子は?」
アルベルト「た、隊長!……はっ!死体は発見当時そのままの状態に保っています」
リカルド「判った。……ドクター、検死の結果は?」
トーヤ「今の所、特殊な刃物等による惨殺と言ったところでしょうか。……発見当時、死体には頭が無く、しかも死体の周りに血痕どころか死体自体に血液がない状態です」
リカルド「……成る程、アル!、ドクターと一緒に事務所の資料室に行って、10年ぐらい前のファイルを調べてくれ!私は魔術師協会の方に行ってくる」
アルベルト「了解しました!!」
一方、ムーンリバーのほとりでは…、
楽しそうに水遊びをしている一人の女性と少年、二匹の小さなレッサーパンダの子供たちの姿があった。
うづき「ほーらぁ!」
バシャバシャァ!!
うづきのはねた大量の水が、少年の身体にかかる。
リオ「うわぁ!うづき先生そんなにかけないでよ!!」
ラスカル「うづきせんせー、リオ君のかたきぃー!!」
ぱい「ラスカルにーちゃまの助っ人―!!」
バチャバチャ
かわいらしい音ではねる水が、うづきにかかった。
うづき「キャ!!……でも、まだまだァ……」
楽しそうに水浴びしているうづきたちだったが…。
うづき「(……えっ、何?この視線……)」
うづきは背後から、何やらとてつもなく冷たい視線が刺さってくるのを感じた。余りにも邪悪な視線に、金縛りになるうづき。
それを感じてか、いつのまにかリオの体内から、護身獣のビーティーが現れていた。
ビーティー「グルルルルルルルゥ……」
リオ「ビーティー、どうしたの?」
やっとの思いで後ろを振り向いたうづきの視界に、一人の少年の姿が入った。
うづき「……チトセくん……」
――仁歳チトセ――、――数ヶ月前までうづきたちと一緒に暮らしていた少年。ある一件で行方不明になり、それ以来見かけなくなっていた少年――
その少年が、彼女の眼前に立っていた。
チトセの姿を認めるや否や、氷のような視線を忘れてまっしぐらに走るうづき。だが……
シュキーン!
うづき「キャー――!!」
チトセがうづきに向けて刃を向けた。
第三話へ続く