頑張れ香菜やん明日へ向かって
作:小俣雅史
第四話
「とりあえず結論として、俺はちゃんと渡した方が良いと思う」
最初に結論を持ってきて様子を伺うような仕草を見せる天野先輩。わたしにはそう言った天野先輩が妙に大きく見えて少し怖くなったが、わたしが頷くのを見ると再び話し始めた。
「これは確かに舞方さんの立場としては気まずいと思うよ。でも自分が本当に好きになってしまったのなら、しっかりその事は伝えたほうが良いと思う。それからいっそ奪ってしまうか、それをけじめとしてきっぱり諦めるか、どっちかだ」
「…………」
天野先輩が言う事はもっともだ。わたしも一度はそれを考えた。けど……それがわたしには難しい。
「それはできないって顔してるな? まぁ、その、あれだよ。当たって砕けろだ。このままうじうじしてたって人生無駄に過ごすだけだぞ?」
「砕けるのは……嫌ですよぉ」
「だあーもうっ!! 砕けたら俺が全部拾ってやるから、ぱぱっと決断してしまえっ!!」
最初はなんだか落ち着いた感じで、しかも聞くだけでいいと言っていたのにいつのまにか強制している気が……。
でも、それだって天野先輩が真剣にわたしの事考えてくれてるって事なんだよね。
砕けたら全部拾ってくれるかぁ……ちょっとだけ胸がドキっとしたかも。
そうだよね、何事もやってみなければ始まらないもんね。
「うんわかった。わたしやってみます」
「そうか。それで決着をつけて、気分すっきりさせてきなよ」
わたしの結論に天野先輩は嬉しそうな顔をしながら頷くと、いきなり立ちあがって大きく伸びをした。
「んーっ……これでいいんだよなぁ」
その時の天野先輩の顔は、公園の電灯のせいで良く見えなかったけど口調は何だかすっきりしているようだった。それを見てわたしも横に置いてあったもうだいぶ冷めた缶を掴んでから立ちあがる。
「今日はありがとうございましたぁ、天野先輩」
「なぁに、俺も結構暇だからこういうボランティア精神は活かさなきゃな」
そう言ってこっちを振り向いた天野先輩の顔は、とても格好良く見えた。
今まであまり良く天野先輩の事知らなかったからなんとも思わなかったけど、こうしてると結構格好いい。もしわたしが前から天野先輩を知っていて、先輩と出会わなかったら天野先輩を好きになっていたかもしれない。
でも……。
胸の中でもやもやしていたものを一つ吐き出してみる。
「わたしはあなたの事が大好きですっ!!」
突然の一人叫びに天野先輩が驚いたように視線をわたしに固定する。それでもわたしは構わず、手を伸ばせば掴めそうな星達を見上げながらその人の名を叫ぶ。
「鷹乃先輩っ!!」
「そっちか!?」
エピローグ
「鷹乃先輩、これ、受け取ってくださいっ!!」
「あ、ごめんなさい香奈。今年は渡す方に回りたいから、遠慮しておくわ。あ、伊波くーん!」
2月の風は、未だ冷たい
−END−
−執筆者あとがき−
聖バレンタインデー。
ヒジリバレンタインデーでも戦闘バレンタインデーでもなく
セントバレンタインデー。
その日モテる男とモテない男が視覚的にはっきりと袂を分かつ。
ちなみにわたしは常に後者……。
いいもん、貰えなくったってウチには節分の時余った豆があるもん(死)
さてそんな訳でバレンタインデーネタのSSを少々。
みなもにしようか相摩嬢にしようか迷ったところですが
ここは意表ついて(誰の)香奈やんと天野君のネタにしてみました。
企画として続編『頑張れ天野君日々精進』なんてものを考えてみましたが
反応によってやるかすまいかを決めることにします。
さて、内容についてですが見た通り深みも何もない薄っぺらい文章です。
見てて笑える訳でも感動する訳でもございません。
だって私が何も考えていませんから(爆
皆さんはこんな文章書かないように気をつけましょう(ぉ
であであ
(2002年02月14日)
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