頑張れ香菜やん明日へ向かって

作:小俣雅史

 

第一話

 

「ふぅ……」

 授業中、片肘をつきながら手に顎を乗せため息を吐いた。これは今日に始まった事ではなく、あの日を意識し出した頃から始まった。

 バレンタインデー。

 女の子が愛する人へ想いのこもったチョコをプレンゼトする日……。

 わたしはそれを渡そうとしている好きな人の事を考えると、ため息が止まらなかった。

「こら舞方! 授業中にため息つくな!!」

「え? あ、は、はい! すみませんっ!!」

 いきなり思考を怒声に中断され、わたしは反射的に謝ると同時に席を勢いよく立ち上がっていた。

 ふと冷静になって周りを見まわすと、クラスメイトの人達が皆こちらを見ながらくすくすと笑っていた。

(う……は、恥ずかしいよぉ)

 わたしは耳が一気に熱くなるのを感じながら席に座って俯いた。

「まったく……」

 その様子に先生が呆れように一言吐き捨てると再び黒板に文字を並べ始めた。

(ダメだなぁ、わたしったら)

 あの人の事を思うと、どんどん気分が沈んでいってしまう。

 かつてはその人の為に先輩と一緒になって欲しいと思った。だけど、今はその人の事への想いが止まらない。好きで好きで仕方がないのだ。

 チョコを渡したい……でも、その人にはちゃんとした、私が推した相手がいる。ここでわたしがチョコを渡すというのは、不謹慎だろう。

(でも…………)

 この気持ち、どうすればいいんだろう。

 わからない、わからないよぉ……。

 結局、この日も私の悩みが解消される事はなかった。




第二話へ続く





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