Memories Off 〜宇宙を翔ける想い〜

作:小俣雅史

 

第九話

 

「唯笑!」

 オレは犬が完全に沈黙したのを見取ると、コクピットを降りた。

 そしてそのまま唯笑のもとへと駆け寄る。

「唯笑っ!」

 目の前にいる少女を、オレは感情のまま抱きしめた。

 全身を安堵と喜びが包む。

 戦闘中、一瞬絶望的な結末を想像してしまった対象。

 だが、確かにオレは彼女の存在を確認している。

 オレの腕の中には、間違いなく唯笑だった。

 全身を温もりが伝わってくる。

 もう一人の大切な人を、オレはオレの全てで感じていた。

「智ちゃん……」

 いつもはやかましい唯笑が、静かにオレに体を預ける。

 なんだか知らない女の人と、信の仲間がいるが、そんなことは気にならなかった。

 オレ達は全身でお互いを感じている。

 それだけで、今は十分だった。

「……さて、今坂さんと智也くん。早く次の行動に移った方がいいと思うわよ」

 しばらくして、女の人が言った。

 ハっと気づいてオレは唯笑を体から離す。

「あ、そうだ……ですね」

 オレはタメ口で答えようとしたが、瞬時に年上と悟って口調を切り替える。

 かなり不自然だっただろう。

「……智也、だったな。智也、お前はこの二人を連れて地球へ戻っててくれ」

 突然、横から信の仲間の男が話し掛けてきた。

 いきなり呼び捨てにされたのは、少々腹が立ったが、まぁそれしか知らないのだろうから仕方がない。

 そして返事を返す前に、オレはその男の言葉の意味を悟った。 

「わかった。お前は、信達と合流するのか?」

「あぁ」

 ……確かに、オレ達と一緒に行って、余計な戦いに巻き込む必要はない。

 信が助けに行くといってまだ助けられてなかったところを見ると、何かあったのだろう。

 それが少し心配だが、オレは唯笑と女の人を優先することにした。

 とりあえず唯笑を促して、ユウナギに乗せる。

 コクピットまでハシゴを掛けてあるのだが、唯笑はその途中で落ちそうになり、オレは慌ててその体を支えに行った。

 

第十話

 

「……翔太くん。必ず戻ってくるのよ。勿論健くんや達も一緒にね」

 先生は俺の目をしっかりと見つめながら言った。

 それに対し、俺はしっかりと深く、そして強く頷いた。

「……あなたを、待ってるわ……」

「え?」

 先生はそれだけ言うと、コクピットの方へと走っていった。

 俺は茫然としてそれを見送る。

「そ、それってどういう!?」

 しばらくして我に返る。

 だが俺が質問をする前に、ユウナギのハッチは閉じられてしまった。

 そして垂直発進用のブースターが火を噴き、あっという間に飛び立っていった。

「……もしかして……もしかするのか?」

 俺はそんなことを考えながら、健達のもとへと向かった。

 耳を澄ますと、爆音が断続的に聞こえてくる。

 もしかしたらもう戦闘が行われているのかもしれない。

 気持ちを切り替えて、俺は走った。

 

第十一話

 

「こなくそぉ!!」

 俺は半ばヤケクソになりながら操縦桿をめちゃくちゃに動かした。

 これだけのビームを普通に操縦して避けきれる奴は人間じゃない。

 なら、いっそこの稲穂信様の神がかり的な運を使ってやろうではないか。

「うりゃうりゃうりゃあ!」

 この機体は当たれば一撃で落ちるが、運動性と速力だけはハンパではない。

 デタラメに動かしても意外と避けれるものだ。

 いや、やっぱり俺の神がかり的な運のおかげか……。

 俺は大量に飛んでくるビームのラッシュを、なんとか避けきってしまった。

 先ほどまで視界が光だけだったので、敵の機体が視界に新鮮だ。

「おい健、大丈夫だったか?」

 俺は健に通信を入れ、健の安否を確かめた。

「う、うん……ギリギリだったけど」

「そっか、よし、相手の周囲を旋回しつつミサイルぶち込むぞ!」

「わかった!」

 俺は操縦桿を一気に引いて機体を上昇させ、クィックィの真上からミサイルを発射した。

 それは機体の頭部に直撃したが、あまりダメージを受けた様子もなく、平然としている。

 なんか腹が立ったので、俺は予定通り旋回降下しながら敵の機体に弾を撃ち込んでいく。

 そして機体の腹部と思われる箇所に、ミサイルを発射しようとした、その時だった。

 バシュッ!!

「なっ!?」

 そこから二本の触手のようなものが射出され、俺の機体に絡みついた。

「ちっ、動かんぞ!!」

 俺は操縦桿を無理矢理動かしてみるが、まったく身動きが取れなかった。

 完全に機体が捕まっている。

 そして敵の機体についている砲身が、一斉にこちらに向けられた。

「――!!」

 瞬間、光が視界を覆った。



第十二話・十三話・十四話へ続く




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