顔を少し赤らめつつ、ヒナはオレに『お願い事』を言う。
「あとね、…目をつぶってほしいの……」
なんか変だな……そんなことを思いながらオレはヒナの言うことに従った……そして…。
――KISS!!――
はじめはヒナがいたずらで『おっきなピチュ』に口付けさせたと思ったが、唇に
触れた温もりから、ぬいぐるみではなく多分、ヒナのだとわかった。ヒナが唇を離して…
「お……おにいたま、め…目をあけて……いいよ?」
……と、いわれて目を開けると、そこには、さっきまで大胆にキスをしてしまった
のを自分でもびっくりしていたオレの――血の繋がらない――可愛い妹が、顔を真っ赤に染めていた。
「ひ……ヒナ、なんで……?」
「はぁ…はぁ…くるしかったぁ……」
――がくぅ!
……どーやら、顔が真っ赤っかだったのはキスしたときに殆ど息を止めていたようだ。
「…くしししし……」
「どーしたんだよ、ヒナ」
「あのね…おねえたまが言ってたんだ『キスの味はレモンの味がするのよ』って。
でも、おにいたまとキスしたらね……チョコバナナの味だったんだ」
…え゛?……咲耶(ヒナ曰く『おねえたま』)が『キスの味はレモンの味がするのよ』って言ったって?
……それに、チョコバナナ…って…確かにチョコバナナはさっき食ってたけど……。
オレの頭の中は酷く混乱し、何が何だかさっぱりわからない。
「わざわざそんな事のためにオレにキスをしたのか?」
こんがらがってショート寸前なオレは、表向き冷静な振りをしてヒナに詰め寄る。
「おにいたまにね…ヒナの初めてのキスを貰って欲しかったの……だから、おにいたまが喜ぶ様にチョコバナナを買ってもらったけど……」
その後の言葉が出ないのか、ヒナはぽろぽろと涙を流す。
「ば〜か…そんなことで泣くんじゃないよ。オレだって正直うれしかったよ…まさか、ヒナの一番欲しいのが
オレだったなんてな……」
そう言いながらヒナの頭をなでてやった。その一言を聞いたヒナは……
「おにいたま……ダイスキ!!」
泣き顔から満面の笑みに表情を変えてオレに抱きついた。
……こりゃあこのままバイトに行ったら、ヒナのことが心配だな……。
……今回の仕事、キャンセルして休み貰おう。オレはそう固く決意した。
−END−