雨の夜の温もり

作:ほろふる!

 

第一話

 

――ザー……――

 今日も昨日も一昨日も、降りしきる雨と雨雲で灰色の世界となっているこんな季節。

 オレ――双刃輝晃(ともは てるあき)――は傘も差さぬまま、筆記具以外殆ど入っていないカバンを 傘代わりにして家路を急いだ。その途中で、ジャージ姿の見慣れた姿が目に入った。……妹の『衛』だ。

 だが、この連日の雨の所為なのか、何時もよりも表情が暗い。
 

「お〜い、どーしたんだ衛?」

 とりあえずオレは、衛に近づき声をかけてみる。もしこれで衛は何かあった時には決まって、
「『どーした』って? なんでもないよ……あにぃ…」
…と『お約束』のようになんでも無いように装うのだが…

「(…にしても、ここまでオレの予想通りであるとは…)」

顔では深刻な表情は隠せない。そこでオレは、

「そうか……オレは衛にとっては『その程度』でしか見ていないんだな…」

 オレはそう言ってカマをかける。

「そ……そんなんじゃないよ…! ボクはあにぃに心配かけたくないから……その…」

「判っているよ……でもさ、鈴凛程でないにしても、オレに相談しろよ…て、ここで立ち話も何だ。オレの部屋で話の続きでもどうだ?」

 この梅雨空の下で長話してたら、互いに健康に悪い。そこでオレは衛と共に、この近くにあるオレの 住んでいるアパートに向かうことにした。

 

第二話へ続く

 

 


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